美容室の開業準備で大きな壁となるのが、シャンプー台やチェアといった専門的な設備選びです。高額な初期費用がかかるため、何から揃え、どう選べば良いか悩む方も多いでしょう。本記事では、必要な設備一覧から主要な美容器具ごとの賢い選び方のポイント、新品・中古・リースの比較まで網羅的に解説します。この記事を読めば、あなたのサロンコンセプトと資金計画に最適な設備が分かり、後悔のない開業準備を進められます。
美容室開業に必要な設備一覧チェックリスト
美容室の開業準備を始めるにあたり、最初に着手すべきなのが必要な設備や備品のリストアップです。どのような設備がどれくらい必要なのかを正確に把握することは、事業計画や資金計画を具体化するための第一歩となります。施術に直接関わる専門的な機器から、お客様の快適性を高める備品、そしてスムーズな店舗運営を支えるバックヤードのアイテムまで、多岐にわたる設備を漏れなく洗い出していきましょう。このチェックリストを活用し、ご自身のサロンに必要なものを一つひとつ確認してください。
施術エリアに必須の大型設備
施術エリアの大型設備は、サロンの印象を決定づけるだけでなく、お客様の満足度とスタッフの作業効率に直接影響を与える非常に重要な要素です。サロンのコンセプトや提供するメニュー、店舗の広さを考慮しながら、機能性とデザイン性の両面から慎重に選定する必要があります。
設備名 | 概要と選定のポイント |
---|---|
シャンプー台(シャンプーボール) | お客様がリラックスできるかを左右する最重要設備の一つです。首や腰への負担が少ないフルフラットタイプ(YUMEなど)、壁際に設置できるバックシャンプー、施術者が動きやすいサイドシャンプーなど種類は様々。ヘッドスパなどリラクゼーションメニューを重視する場合は、フルフラットタイプがおすすめです。 |
スタイリングチェア(セット椅子) | カットやカラーなど、お客様が長時間座る椅子です。座り心地はもちろん、昇降機能のスムーズさ(油圧式・電動式)、掃除のしやすさ、サロンのインテリアに合うデザイン性を重視して選びましょう。 |
ミラー(セット面) | お客様がご自身の姿を確認するための鏡であり、空間を広く見せる効果もあります。一面鏡タイプや両面タイプ、壁掛け、置き型などがあります。コンセントの位置や数、照明とのバランスも考慮して、空間全体で統一感のあるデザインを選ぶことが重要です。 |
ワゴン | 施術中に使用するシザーやコーム、ダッカール、カラー剤などを収納し、効率的に作業するための必須アイテムです。収納力や耐久性、移動のスムーズさに加え、天板の素材(薬剤への耐性)も確認しましょう。 |
施術をサポートする専門的な美容器具
基本的なカットやカラー以外の付加価値を提供し、他のサロンとの差別化を図るためには、専門的な美容器具の導入が不可欠です。パーマやトリートメントの効果を最大限に引き出し、お客様の満足度を高めるための設備投資は、客単価の向上にも繋がります。
器具名 | 概要と選定のポイント |
---|---|
促進機(加温機) | カラーやパーマ、トリートメント剤の浸透を促進し、施術時間を短縮するための機器です。遠赤外線で加温するローラーボールや、髪へのダメージを抑えながら加温できるエアウェーブ、ナノスチームで潤いを与えるパルッキーなどがあります。導入することで、提供できるメニューの幅が大きく広がります。 |
スチーマー | 微細な水蒸気を髪に当てることで、髪の内部に水分を補給し、薬剤の浸透を助ける器具です。トリートメントやヘッドスパの効果を格段に高めることができます。 |
デジタルパーマ機 | ロッド自体が発熱し、熱の力でカールを形状記憶させるパーマ用の機器です。乾かすだけでカールが再現しやすく、持ちが良いのが特徴。導入には専用のロッドなども必要になります。 |
消毒器 | ハサミやコームなど、お客様の肌や髪に直接触れる器具を衛生的に保つために法律で設置が義務付けられています。紫外線消毒器や煮沸消毒器などがあり、保健所の検査基準を満たすものを必ず設置しなければなりません。詳しくは管轄の保健所のウェブサイトをご確認ください。 |
バックヤードや受付周りの備品
お客様の目には直接触れにくい部分ですが、サロン運営の心臓部ともいえるのがバックヤードや受付周りの備品です。予約管理から会計、タオルの洗濯・消毒といった業務を効率化し、お客様にスムーズで快適なサービスを提供するためには、これらの備品を計画的に揃えることが欠かせません。
場所 | 備品名 | 概要と選定のポイント |
---|---|---|
受付・待合 | POSレジシステム | 会計機能だけでなく、顧客管理や予約管理、売上分析などの機能を持つシステムです。キャッシュレス決済端末との連携も考慮し、サロンの規模や運営スタイルに合ったものを選びましょう。 |
電話機・予約管理システム | お客様からの予約や問い合わせに対応するための電話機は必須です。近年ではオンライン予約システムを導入し、電話対応の負担を軽減するサロンが増えています。 | |
待合ソファ・テーブル | お客様が待ち時間を快適に過ごせるよう、サロンのコンセプトに合ったデザインと座り心地の良いものを選びます。 | |
その他 | お客様のコートや手荷物を預かるロッカーやクローク、マガジンラック、ドリンクサーバーなども必要に応じて準備します。 | |
バックヤード | 洗濯乾燥機 | 毎日大量に出るタオルを洗濯・乾燥させるために、業務用のパワフルなものが推奨されます。設置スペースや給排水の位置を事前に確認することが重要です。 |
タオルウォーマー | 温かいタオルを提供するために使用します。お客様への快適なサービス提供に欠かせない備品の一つです。 | |
その他 | スタッフ用のロッカー、冷蔵庫や電子レンジなどの家電、薬剤を調合するためのシンク、在庫を保管する棚なども必要になります。 |
賢い美容室の設備選び 3つの基本方針
美容室の開業準備において、設備選びはサロンの成功を大きく左右する重要な要素です。お客様の満足度はもちろん、スタッフの働きやすさや運営コストにも直結するため、慎重な判断が求められます。ここでは、後悔しない設備選びを実現するための「3つの基本方針」を詳しく解説します。資金計画やサロンのコンセプトと照らし合わせながら、最適な選択肢を見つけ出しましょう。
新品か中古か メリットとデメリットを徹底比較
設備を揃える際、まず直面するのが「新品」と「中古」のどちらを選ぶかという問題です。それぞれにメリットとデメリットが存在するため、ご自身の開業プランや予算に応じて最適なバランスを見極めることが肝心です。特に開業初期は、限られた資金をいかに有効活用するかが成功の鍵となります。
新品の最大の魅力は、最新の機能性とメーカー保証による安心感です。デザインにも統一感が生まれ、お客様に清潔で洗練された印象を与えられます。一方で、中古品はなんといっても初期費用を大幅に削減できる点が大きなメリットです。 状態の良い新古品や人気モデルが、新品の半額以下で見つかることも少なくありません。 しかし、保証期間が短い、あるいは全くない場合が多く、故障のリスクは新品に比べて高まります。
それぞれの特徴を下記の表にまとめましたので、比較検討の材料としてご活用ください。
比較項目 | 新品 | 中古品 |
---|---|---|
初期費用 | 高額になる傾向 | 大幅に抑えられる |
保証・メンテナンス | メーカー保証が充実(通常1〜3年) | 保証がない、または短期間(3〜6ヶ月程度)の場合が多い |
デザイン・選択肢 | 豊富で統一感を出しやすい | 選択肢が限られ、在庫に左右される |
故障リスク | 低い | 内部の劣化などがあり、新品より高い |
納期 | モデルによっては数ヶ月待つことも | 在庫があれば即納可能 |
購入かリースか 資金計画に合わせた選び方
設備の調達方法には、「購入」と「リース」という選択肢があります。これはサロンの資金計画やキャッシュフローに直接影響を与える重要な判断です。手元の自己資金や融資額、そして長期的な経営戦略を考慮して選択する必要があります。
「購入」は、総支払額がリースよりも安くなるのが一般的で、設備が自社の資産となる点が最大のメリットです。 減価償却による節税効果も期待できます。しかし、開業時に多額の初期投資が必要になるというデメリットがあります。 一方、「リース」はリース会社が代わりに設備を購入し、月々定額でレンタルする仕組みです。 これにより、初期費用を劇的に抑えることができ、月々の支払いも経費として計上できるため会計処理が分かりやすいという利点があります。 ただし、契約期間中の解約が原則できず、支払総額は購入するよりも割高になる傾向にあります。
どちらの方法がご自身のサロンに適しているか、以下の比較表を参考にじっくりと検討しましょう。
比較項目 | 購入 | リース |
---|---|---|
所有権 | 自社(サロン)の資産になる | リース会社にある |
初期費用 | 高額(一括または分割払い) | 低額(月々のリース料のみ) |
総支払額 | リースより割安 | 金利・手数料が上乗せされ割高になる |
会計処理 | 資産計上し、減価償却が必要。固定資産税の対象になる場合も。 | リース料を全額経費として計上可能 |
契約期間 | なし | あり(通常3〜7年)。原則、中途解約は不可。 |
サロンのコンセプトに合わせたデザインの重要性
美容室の設備は、単なる業務用の道具ではありません。サロンの世界観を演出し、ブランド価値を高めるための重要なインテリア要素です。 お客様がドアを開けた瞬間に感じる「素敵」「心地よい」といった第一印象は、設備のデザインに大きく左右されます。 そのため、設備選びは必ずサロンのコンセプトと連動させて行う必要があります。
例えば、以下のようにコンセプトによって選ぶべきデザインは大きく異なります。
- ラグジュアリー・高級志向のサロン
重厚感のあるレザーのスタイリングチェアや、間接照明が映えるデザイン性の高いミラーなどを選び、非日常的で特別な空間を演出します。 - ナチュラル・オーガニック系のサロン
ウッド調の什器やアースカラーの設備で統一し、心からリラックスできる温かみのある雰囲気を作り出します。 - モダン・スタイリッシュなサロン
モノトーンを基調としたシンプルなデザインや、金属・ガラスなどの無機質な素材を取り入れ、洗練された都会的なイメージを強調します。
スタイリングチェア、シャンプー台、ミラー、ワゴンといった主要な設備のテイストを統一することで、空間全体にまとまりが生まれます。 デザインがバラバラだと、せっかくこだわった内装も雑然とした印象になりかねません。お客様が長時間過ごす空間だからこそ、居心地の良さを追求し、「また来たい」と思ってもらえるような、コンセプトが息づく設備選びを心がけましょう。
【主要設備別】美容室開業のための上手な選び方とポイント
美容室を構成する設備は、お客様の満足度とスタッフの作業効率、ひいてはサロンの売上を左右する重要な要素です。ここでは、サロンの心臓部ともいえる主要な設備について、それぞれの特徴と選び方のポイントを具体的に解説していきます。ご自身のサロンコンセプトと照らし合わせながら、最適な一品を見つけ出しましょう。
シャンプー台の選び方 バック・サイド・フルフラットの違い
シャンプー台は、お客様がリラックスできるかどうかを大きく左右する設備です。主に「バックシャンプー」「サイドシャンプー」「フルフラット」の3種類があり、それぞれに特徴があります。サロンのコンセプトや提供したいサービスに合わせて選ぶことが重要になります。
それぞれのメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
種類 | メリット | デメリット | おすすめのサロン |
---|---|---|---|
バックシャンプー | お客様が椅子に座ったまま移動できるため楽な姿勢を保てます。施術者も腰への負担が少なく、ヘッドスパなどの長時間メニューにも向いています。 | 広い設置スペースが必要となり、導入コストも比較的高くなる傾向があります。 | リラクゼーションメニューを重視するサロン、客単価を高めに設定したいサロン |
サイドシャンプー | 省スペースで設置でき、導入コストを抑えやすいのが特徴です。昔ながらの美容室で多く採用されています。 | お客様は中腰の姿勢になるため首や腰に負担がかかりやすく、施術者も無理な体勢になりがちです。 | 小規模サロンや、コストを最優先に考えたい場合 |
フルフラット | お客様が完全に横になれるため、最高の寝心地とリラクゼーション効果を提供できます。「YUMEシャンプー」などが代表的で、極上のヘッドスパメニューの提供が可能です。 | 導入コストが最も高価であり、非常に広い設置スペースを必要とします。シャンプー以外の施術ができない点も考慮が必要です。 | ヘッドスパを強みとする高級志向のサロン、他店との圧倒的な差別化を図りたいサロン |
選定の際は、デザイン性だけでなく、給排水の位置や必要な工事も事前に確認することが不可欠です。ショールームで実際に寝心地や施術のしやすさを体験してみることを強くお勧めします。
スタイリングチェア(セット椅子)の選び方
お客様が施術中に最も長く過ごすのがスタイリングチェアです。座り心地はもちろん、サロンの雰囲気を決定づけるデザイン性も非常に重要となります。選び方のポイントは以下の通りです。
まず、お客様の快適性を追求した座り心地が最優先事項です。クッションの硬さやシートの幅、アームレストの有無などをチェックしましょう。長時間座っていても疲れにくい椅子は、顧客満足度に直結します。次に、施術者の作業効率を考慮した機能性も欠かせません。椅子の昇降はスムーズか(油圧式・電動式)、施術の邪魔にならないか、ロック機能は確かかなどを確認してください。特に、スタッフの身長に関わらず最適な高さで施術できることは、腰への負担軽減にもつながるため大切です。さらに、サロンのコンセプトや内装にマッチしたデザインを選びましょう。椅子の色や素材、フォルムが空間全体の印象を大きく左右します。最後に、日々のメンテナンスのしやすさも忘れてはならないポイントです。カラー剤やパーマ液が付着しても掃除しやすい素材(ビニールレザーなど)か、耐久性は十分かを確認しておくことで、長く美しい状態を保てます。
ミラー(セット面)とワゴンの選び方
ミラーとワゴンは、施術スペースの機能性とデザイン性を両立させる上で重要な役割を担います。それぞれを単体で選ぶのではなく、空間全体としての調和を考えて選定することが求められます。
セット面ミラーは、お客様が自身の姿を確認するための設備であると同時に、空間を広く見せる効果もあります。サイズは、お客様の顔だけでなく、全体のヘアスタイルが確認できる大きさが理想的です。デザインは、シンプルな一面鏡タイプから、収納棚や間接照明が付いた機能的なものまで多岐にわたります。コンセントの位置や数、ドライヤーホルダーの有無など、施術のスムーズさに直結する細かな仕様も忘れずに確認しましょう。
一方、ワゴンは施術に必要な道具を収納し、効率的に作業を進めるための相棒です。十分な収納力があることはもちろん、キャスターの動きが滑らかで、移動がスムーズかどうかが作業効率に影響します。また、天板が広く、薬剤の調合や道具の一時置きに便利なものが重宝します。カラー剤に強い素材や、掃除のしやすいシンプルな構造であるかも選ぶ際の重要な基準となります。
促進機やスチーマーなど美容器具の選び方
促進機やスチーマーといった美容器具は、施術のクオリティを高め、新たなメニュー展開を可能にするための投資です。サロンの付加価値を向上させるために、戦略的に導入を検討しましょう。
カラーやパーマの時間を短縮し、薬剤の浸透を助ける促進機(ローラーボール、遠赤外線プロセッサーなど)は、お客様の待ち時間を減らし、サロンの回転率を上げる効果が期待できます。選ぶ際は、加温性能や操作性、デザイン性に加え、設置方式(スタンド式、壁掛け式、天吊り式)がサロンのスペースに適しているかを確認することが大切です。
また、微細な水蒸気で髪に潤いを与えるスチーマーは、トリートメント効果を飛躍的に高めるだけでなく、極上のヘッドスパメニューにも活用できます。ナノレベルのスチームが出るか、オゾン機能の有無、給水タンクの容量などが選定のポイントです。高単価メニューの創出に直結するため、費用対効果を十分に検討して選びましょう。これらの機器を導入することで、他店との差別化を図り、顧客満足度をさらに高めることが可能になります。
会計をスムーズにするPOSレジシステムの選び方
現代のサロン経営において、POS(販売時点情報管理)レジシステムは単なる会計ツールではありません。顧客管理から予約管理、売上分析までを一元的に行い、経営を強力にサポートする心強いパートナーです。数多くのサービスが存在するため、自店の規模や目指す運営スタイルに合ったシステムを選ぶ必要があります。
選定にあたって重視すべきポイントは、まず「機能性」です。会計機能はもちろんのこと、顧客情報(来店履歴、施術内容、店販購入履歴など)を管理できるカルテ機能、予約サイトとの連携機能、在庫管理機能などが搭載されているかを確認します。次に、スタッフ全員がストレスなく使える「操作性」も重要です。直感的で分かりやすいインターフェースか、導入時のトレーニングサポートはあるかなどをチェックしましょう。さらに、キャッシュレス決済端末やレシートプリンターといった周辺機器との「連携性」も確認が不可欠です。近年需要が高まっている多様な決済手段にスムーズに対応できるかは、お客様の利便性に大きく関わります。最後に、月額費用や初期導入コストといった「価格」と、トラブル発生時に迅速に対応してくれる「サポート体制」を総合的に比較検討し、長期的な視点で最適なシステムを選びましょう。
美容室の設備購入先とそれぞれの特徴
美容室の開業設備をどこで購入するかは、初期費用だけでなく、開業後の運営にも大きく影響する重要な選択です。それぞれの購入先には異なる特徴やメリット・デメリットが存在します。サロンの規模やコンセプト、そして何よりご自身の資金計画や事業経験に合わせて、最適な購入先を見極めましょう。ここでは、主要な3つの購入先について、その特徴を詳しく解説していきます。
信頼と実績の美容専門ディーラー
美容専門ディーラーは、シャンプー台やチェアといった大型設備から、シザーやコームなどの小物、さらにはパーマ剤やカラー剤といった消耗品まで、美容室運営に必要なあらゆる商材を取り扱う専門商社です。多くのサロンオーナーが、開業準備のパートナーとしてディーラーを選んでいます。
最大のメリットは、豊富な知識と経験に基づいたトータルサポートを受けられる点にあります。物件探しや資金調達の相談、事業計画の策定支援、内装業者との連携、さらにはオープン後の販促活動の提案まで、開業に関するあらゆるプロセスを並走してくれる心強い存在となるでしょう。また、機器の設置からアフターメンテナンスまで一貫して任せられるため、安心してサロン運営に集中できる環境が整います。
一方で、手厚いサポートが含まれる分、価格は中古品や通販サイトと比較すると高くなる傾向にあります。しかし、長期的な視点で見れば、その安心感とサポート体制は価格以上の価値があると感じるオーナーも少なくありません。特に、初めての開業で何から手をつけて良いか分からない方や、機器の選定から設置、メンテナンスまで一括で任せたい方には最適な選択肢と言えるでしょう。
項目 | 特徴 |
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メリット | ・開業準備全般のコンサルティングを受けられる ・必要な設備や商材が一度に揃う ・設置からメンテナンスまで一貫したサポート ・最新の業界情報やトレンド製品の紹介を受けやすい |
デメリット | ・価格が比較的高めになる傾向がある ・ディーラーによって取り扱いメーカーが限られる場合がある |
代表的な企業 | タカラベルモント、ビューティガレージ、きくや美粧堂、ガモウなど |
実物を確認できるメーカーのショールーム
特定のメーカーの製品にこだわりたい場合や、デザイン性・機能性を自分の目で直接確かめてから決めたい場合には、メーカーのショールームへ足を運ぶことをお勧めします。カタログやウェブサイトだけでは伝わらない、素材の質感や色味、チェアの座り心地、シャンプー台の使い勝手などを実際に体感できる貴重な機会です。
ショールームでは、専門のスタッフから製品のコンセプトや開発背景、細かな機能について直接説明を受けることができます。サロンのコンセプトを具現化する上で、設備のデザインや質感は極めて重要な要素です。お客様が長時間過ごす空間だからこそ、細部までこだわりたいオーナーにとって、ショールームはインスピレーションを得る絶好の場所となるはずです。人間工学に基づいた最新のチェアの座り心地や、施術効率を上げるための最新機器の動作を体験することで、より具体的なサロンのイメージを固めることが可能になります。
ただし、ショールームではそのメーカーの製品しか比較検討できず、その場で購入手続きができない場合も多い点には注意が必要です。多くの場合、気に入った製品が見つかれば、提携しているディーラーを紹介され、そこを通じて購入するという流れになります。
項目 | 特徴 |
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メリット | ・最新の製品を実際に見て、触れて、試すことができる ・専門スタッフから直接、詳細な説明を受けられる ・デザインや質感、使い心地を確認し、サロンとの相性を判断できる |
デメリット | ・そのメーカーの製品しか見ることができない ・ショールームの所在地が都市部に限られることが多い ・その場で購入できず、ディーラー経由となる場合がある |
代表的な企業 | タカラベルモント、大広製作所(OOHIRO)など |
コストを抑える中古専門業者や通販サイト
開業時の初期投資は、できる限り抑えたいと考えるのが自然です。その際に力強い味方となるのが、中古の美容設備を専門に扱う業者や、インターネットの通信販売サイトです。最大の魅力は、何と言っても価格の安さにあります。新品であれば高額なハイエンドモデルのシャンプー台やスタイリングチェアも、中古であれば半額以下、場合によってはそれ以上の割引率で手に入れることも夢ではありません。
特にビューティガレージのような大手通販サイトでは、新品から中古品まで幅広い価格帯の製品を比較検討でき、24時間いつでもどこからでも注文できる手軽さが魅力です。また、中古専門業者の中には、買い取った機器を自社で丁寧にメンテナンスし、保証を付けて販売している信頼できる会社も存在します。
しかし、コストを抑えられる一方で、リスクも伴うことを理解しておく必要があります。中古品は当然ながら使用感があり、傷や汚れ、目に見えない部分の劣化が進んでいる可能性があります。保証期間が短い、あるいは全くないケースも多く、購入後の故障は自己責任となることも少なくありません。通販サイトの場合は実物を確認できないため、届いてみたらイメージと違ったという事態も起こり得ます。これらのリスクを許容でき、ご自身である程度のメンテナンス知識がある方や、とにかく初期費用を圧縮したい方にとっては非常に有効な選択肢となるでしょう。
項目 | 特徴 |
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メリット | ・新品に比べて圧倒的に価格が安く、初期費用を大幅に削減できる ・通販サイトは品揃えが豊富で、いつでも注文できる ・廃盤になった人気モデルなど、掘り出し物が見つかる可能性がある |
デメリット | ・品質にばらつきがあり、故障のリスクが伴う ・保証がない、または短期間であることが多い ・アフターフォローは基本的に期待できない ・通販の場合、実物を確認できず、送料が高額になることがある |
代表的な選択肢 | 中古専門業者(美ディカル、サロンマーケットなど)、通販サイト(ビューティガレージ、楽天市場、Amazonなど) |
開業前に知っておきたい設備選びの注意点と失敗談
理想のサロンを思い描き、心躍る設備選び。しかし、その過程には見落としがちな落とし穴が潜んでいます。デザインや機能性だけで選んでしまうと、後から「こんなはずではなかった」という事態に陥りかねません。ここでは、開業準備をスムーズに進めるために、先輩オーナーたちが経験した失敗談を交えながら、事前にチェックすべき重要な注意点を3つのポイントに絞って解説します。
設置スペースと搬入経路の事前確認は必須
気に入ったデザインのシャンプー台やスタイリングチェアが見つかっても、実際に店舗に設置できなければ意味がありません。「機器が大きすぎて予定のスペースに収まらない」「入口や通路が狭くて搬入できない」といったトラブルは、開業準備における典型的な失敗例です。このような事態を避けるため、内装の設計段階から設置したい設備のサイズを工事業者と共有し、図面に正確に反映させることが極めて重要になります。
特に注意したいのが、機器の寸法だけでなく、施術者がスムーズに動ける「動線」を確保することです。お客様が快適に過ごせるか、スタッフが効率的に作業できるかを具体的にイメージしながらレイアウトを決定しましょう。さらに、見落としがちなのが店舗までの「搬入経路」の確認です。エレベーターの広さや耐荷重、階段の幅、ドアの開口部のサイズなどを事前に採寸し、問題なく搬入できるかを確認してください。万が一、搬入経路が確保できずクレーンでの吊り上げ作業などが必要になると、数十万円単位の予想外の追加費用が発生するケースもあるため、物件契約前の内見時に施工業者に同行してもらうと安心です。
給排水設備と電気容量のチェックを忘れずに
美容室の運営に不可欠なインフラである、給排水と電気設備。これらの確認を怠ると、開業そのものが遅れてしまう最悪の事態を招くこともあります。特に居抜き物件の場合でも、以前のサロンの設備状況を鵜呑みにせず、専門業者による現地調査を必ず行いましょう。
シャンプー台を複数台同時に使用した際の十分な水圧が確保できるか、給水管の口径は最低でも20mm以上あるかが一つの目安となります。 また、薬剤や髪の毛が詰まりやすい排水管は、口径が75mm以上あると安心です。 給湯器の能力(号数)も重要で、シャンプー台2台なら24号、3台なら32号が一つの基準とされています。
電気容量も同様に深刻な問題を引き起こします。ドライヤーやデジタルパーマ機などは消費電力が非常に大きく、複数の機器を同時に使用するとブレーカーが落ち、お客様の施術を中断させてしまうことになりかねません。 サロン全体の消費電力をあらかじめ計算し、必要な契約アンペア数を確認してください。 一般的な美容室では最低でも50A以上、規模によっては100A以上が必要になることもあります。 容量が不足している場合は増設工事が必要となり、物件によっては増設自体が困難な場合や高額な費用がかかることもあるため、物件選びの段階で必ず確認すべき項目です。
インフラ設備 | チェックポイント | 推奨されるスペックの目安 |
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給水設備 | 給水管の口径 / 水圧 | 口径20mm以上 / 水圧2.0気圧以上 |
給湯設備 | ガス給湯器の号数 | シャンプー台2台:24号 / 3台:32号 |
排水設備 | 排水管の口径 | 75mm以上が望ましい(最低60mm) |
電気設備 | 契約アンペア数 | 最低50A~75A以上(規模により100A以上も) |
中古設備を選ぶ際のリスクと確認ポイント
開業費用を抑えるために中古設備の導入を検討するオーナーは少なくありません。しかし、価格の安さだけに目を奪われると、「安物買いの銭失い」になりがちです。購入直後に油圧ポンプが故障し、修理費用でかえって高くついた、メーカーの保証が受けられず、故障時に修理を断られたといった失敗談は後を絶ちません。 中古品には、新品にはない特有のリスクがあることを十分に理解しておく必要があります。
中古設備を選ぶ際は、信頼できる業者を見極めることが最も重要です。専門のメンテナンススタッフが在籍し、独自の保証制度を設けている業者から購入することをおすすめします。 購入前には、以下のポイントを必ず確認しましょう。
- 動作確認と現物確認:可能な限り実物を見て、全ての機能が正常に作動するかを確認します。
- 保証の有無と期間:最低でも6ヶ月以上の保証が付いているか、保証内容(修理・交換・返金など)はどうなっているかを確認します。
- メンテナンス履歴:過去の修理歴や部品交換の履歴を確認できると、機器の状態を把握しやすくなります。
- 製造年月日と使用年数:部品の供給が終了している古いモデルは、故障した際に修理不能となるリスクがあります。
- 消耗品の状態:スタイリングチェアのレザーの摩耗やひび割れ、シャンプー台のホースやパッキンの劣化具合などをチェックしましょう。
フリマサイトやオークションでの個人間売買は、保証やサポートが一切ないケースがほとんどのため、特に慎重な判断が求められます。 初期投資を抑えることは大切ですが、お客様の安全とサロンの信頼に関わる設備投資であることを忘れずに、長期的な視点で賢い選択をしてください。
まとめ
美容室開業における設備選びについて、必要な一覧から賢い選定方針、購入先の比較、そして失敗しないための注意点まで網羅的に解説しました。成功の鍵は、サロンのコンセプトや資金計画に合わせ、新品・中古、購入・リースといった選択肢を最適に組み合わせることです。シャンプー台やスタイリングチェアなど個別の選び方はもちろん、設置スペースや給排水・電気容量といったインフラ面の事前確認も欠かせません。本記事で紹介したポイントを一つひとつ着実にクリアし、あなたの理想を形にするサロン作りを実現してください。